走り出す、
 目的まっしぐら、
 とにかく早く、
 起き抜けままに、
 息切らせ、息切らせ、
 冬の空気に渇く喉をならし、
 乾いた道を巻きつけるタイヤ、
 坂を駆け上がれ、
 暖まり始めた筋肉、
 走り去る家々、
 あっけない幕。
 最後尾。
 看板。
 締め切りました。
 キビスを返す。
 上がった息が笑いに変わる。
  
 朝からこんな。
 目的はあった。
  
 朝からこんな。
 絵に描いた様な状況。
  
 朝からこんなに。
 しかし、その実どうでも良かった。
  
 朝からこんなに清々しい。 
  
 ただ、踊る様に地を駆け、
 つまらない事にひたむける自分が嬉しく、
 まだまだ馬鹿をやろう、
 爪を研ぎに、爪を研ぎに、

