雨の夜に思う。

洒落に成らない量の雨が降っている。
傘もあまり役に立たない。
決まってあの日のことを思い出す。
いまではもう笑い話位にしかならない様な種類の事だが。
今より少しばかり冷たい雨が降る恐らく9月末位の日。
雨がザンザン
音をたて路面がシブキで煙る夜空のもと。
雨が降る中、
走り去る車の流れ、
6車線ある道路を傘もささず駆け抜ける彼女。
信号など無い。
恐ろしいスピード。
走り込みながら振り上げる、きちんと畳んだ女モノの傘、
…上段、
何度も僕のアタマに振り下ろされる。
早回しのスイカ割りの様に


傘。
彼女の真剣な視線が大スキだなと。
イイナと。
濡れた髪が綺麗だなと、
恐らく腕で防いでいたのだろう。
もしくは彼女の手加減か、それにしては彼女の動きに見とれている
その傘はそれ以来見ていない。
腕に傷はなかった。
嘘の様な思い出、
テレビか何かの見間違い
彼女への次のプレゼントは女モノの傘だった。
ウソ、
嘘。
そんな面白い話し、
君らが体験したことがないように
恐らくそれらはフィクションで
空想好きの誰かさんの作りごと。
夢のような日々。
大切な時間、ウソのようなそれら
悪くないジョーク
西新宿に戻ると、乾いたアスファルトが僕の両足を鷲づかみにした。
夕方の様な西の空に向け僕は足を引き抜き
そして前へ出す。